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ドアが「バタン」と大きな音を立てて閉まるようになった、または閉まりが遅すぎて完全に閉まらなくなったという経験はありませんか?
実はこれらの問題は、ドアクローザーの調整で解決できることがほとんどです。プロに依頼すると5,000円〜20,000円ほどかかることもありますが、基本的な知識さえあれば自分で簡単に調整することができます。
この記事では、専門知識がなくても自分でできるドアクローザーの調整方法を詳しく解説します。ドアの閉まるスピードを最適化し、日常のストレスを解消しましょう。
ドアクローザーとは?基本的な構造と種類
ドアクローザーは、ドアを自動的に閉めるための装置です。内部に油圧システムを持ち、ドアが開いた後にゆっくりと閉まるように制御する役割を果たしています。
玄関ドアや室内ドア、店舗の出入り口などさまざまな場所で使用されており、手を離しても自動的にドアが閉まることで、防犯性や冷暖房効率の向上に役立っています。
ドアクローザーは大きく分けて2種類あります。
タイプ | 特徴 | 取り付け位置 |
パラレル型 | ドアが閉まるとアームはドアに対して平行になる | ドアを押す側(室内側)に取り付ける |
スタンダード型 | ドアが閉まるとアームはドアに対して垂直になる | ドアを押す反対側(開く側)に取り付ける |
ドアクローザー調整が必要なタイミング
ドアクローザーは長期間の使用や季節の変化によって、適切な動作をしなくなることがあります。以下のような症状が現れたら調整のタイミングです。
調整のタイミング
- ドアが「バタン」と強く閉まるようになった:急に閉まる音が大きくなったと感じたら、油漏れや速度調整の不具合の可能性があります。
- ドアの閉まるスピードが極端に遅くなった:季節の変わり目(特に冬)に起こりやすく、油の粘度変化が原因のことが多いです。
- ドアが途中で止まらなくなった(ストップ機能の不具合):ストップ機能が解除されているか、部品の噛み合わせが悪くなっている可能性があります。
- ドアが最後まで閉まらなくなった: 最終的にラッチ(錠)がかからない状態になると、防犯上も問題があります。
- 季節の変わり目で動作が変化した:特に寒くなると油の粘度が上がり、ドアの閉まるスピードが遅くなることがあります。
これらの症状が現れたら、まずは自分で調整を試みてみましょう。適切な調整で問題が解決することがほとんどです。
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ドアクローザー調整に必要な道具
ドアクローザーの調整に必要な道具は非常にシンプルです。以下の道具を用意しましょう。
クローザーの調整に使用する道具
- プラスドライバーまたはマイナスドライバー
ほとんどの調整弁はプラスかマイナスの形状になっています。サイズの合うドライバーを用意しましょう。 - 専用スパナ(特定機種のみ)
一部のマンションBL型などでは、専用のスパナが必要な場合があります。 - 脚立
ドアの上部に設置されているタイプでは、安全に作業するために脚立があると便利です。 - 潤滑剤(必要に応じて)
アームやリンクなどの可動部のメンテナンスに潤滑剤があると便利です。ただし、油圧調整部分には使用しないでください。
基本的には適切なサイズのドライバー1本あれば調整可能ですが、作業をスムーズに行うためには上記の道具を揃えておくと良いでしょう。
ドアクローザーの速度調整方法
ドアクローザーの速度調整は、ドアの閉まるスピードを最適化して「バタン」と閉まる問題や閉まりが遅すぎる問題を解決する重要な作業です。実は多くのドアトラブルはこの調整だけで解決できることが多いのです。ここでは、調整方法を解説していきます。
調整弁の見つけ方
ドアクローザーの調整を行うには、まず本体側面にある調整弁の位置を確認することが重要です。ドアクローザーの種類やメーカーによって、調整弁の数は1〜3個と異なり、新しいタイプでは一般的に2〜3個備わっています。調整弁の横には「1」「2」「3」または「L」などの刻印があり、それぞれが調整できるドア閉まりの区間を示しています。
なお、築年数の古い建物に設置されている古いタイプのドアクローザーは調整弁が1個しかない場合もあり、この場合はその1つの調整弁で全体の閉まる速度を調整することになります。
速度調整の基本原則
調整弁を回す方向によって、ドアの閉まるスピードを変えることができます。以下の基本原則を覚えておきましょう。
調整弁の方向別スピード調整
- 時計回り(右回り)→ スピードが遅くなる
調整弁を時計回りに回すと、閉まるスピードが遅くなります。 - 反時計回り(左回り)→ スピードが速くなる
調整弁を反時計回りに回すと、閉まるスピードが速くなります。
※メーカーや機種によって逆の場合もあるため、少しずつ回して効果を確認しながら調整しましょう。
第一速度の調整方法
第一速度とは、ドアが完全に開いた状態から閉じ始める最初の区間(約120度〜70度)の速度のことです。
手順1:調整弁1を確認する
調整弁の横に「1」という刻印がある調整弁を見つけます。
手順2:適切なドライバーをセットする
調整弁に合ったサイズのドライバーを溝にしっかりとセットします。
手順3:少しずつ回して調整する
まず開閉してスピードを確認し、速すぎる場合は調整弁を時計回りに、遅すぎる場合は反時計回りに3〜5度ずつ回して行います。調整するたびに動作確認が必要です。
第一速度は比較的速くても問題ありませんが、勢いよく閉まりすぎないように調整するのがポイントです。
第二速度の調整方法
第二速度とは、ドアが閉じる中間地点から閉じる直前まで(約70度〜10度)の区間の速度です。
手順1:調整弁2を確認する
調整弁の横に「2」という刻印がある調整弁を見つけます。
手順2:第一速度と同様に調整する
約70度開いた状態から確認し、速すぎる場合は時計回り、遅すぎる場合は反時計回りに調整します。
第二速度は第一速度よりやや遅く設定するのが一般的です。これにより、ドアがスムーズに閉まっていく感覚が得られます。
ラッチング速度の調整方法
ラッチング速度とは、ドアが閉まる最後の区間(約10度〜0度)の速度のことです。この部分は特に重要で、ドアが確実にラッチ(錠)にかかるようにします。
手順1:調整弁3またはLを確認する
調整弁の横に「3」または「L」という刻印がある調整弁を見つけます。
手順2:最終区間の速度を調整する
ドアが閉まりかけの状態で確認し、閉まりきらない場合は反時計回りに速度を上げ、バタンと音がする場合は時計回りに速度を落とします。
ラッチング速度は、ドアがしっかりと閉まりつつも、大きな音を立てないよう絶妙に調整することがポイントです。
ドアクローザーのストップ機能調整方法

ドアクローザーのストップ機能は、ドアを開いた状態で固定できる便利な機能です。荷物の出し入れや部屋の換気など、ドアを一時的に開けておきたい場合に重宝します。しかし、このストップ機能が正しく働かなくなると、ドアを開けておきたい時に勝手に閉まってしまうといった不便が生じます。ここでは、ストップ機能の調整方法を解説していきます。
ストップ機能の仕組みと確認方法
ストップ機能とは、ドアを開いたときに任意の位置で止めておける機能です。多くのドアクローザーには、この便利なストップ機能が搭載されています。
ストップ機能の確認方法:
- ドアを約90度程度開きます
- そのままドアをさらに少し押してみてください
- 正常であれば、ドアがその位置で止まります
ストップ機能が効かない主な原因は、機能が解除されている、調整ネジが緩んでいる、またはセレーション(ギザギザの部分)が噛み合っていないことです。
ストップ位置の調整手順
ドアを好みの位置でストップさせたい場合は、以下の手順で調整しましょう。
手順1:ストップ調整ネジを確認する
ドアクローザーのストップ調整部分を確認します。通常はアームとの結合部付近にあります。
手順2:ドアを希望の位置に開く
ストップさせたい角度までドアを開きます。一般的には90度から120度の間で設定することが多いです。
手順3:ストップ調整ネジを締める
プラスドライバーまたは専用スパナでストップ調整ネジを締めます。この際、きつすぎると動作不良の原因になるので、適度な締め具合にします
手順4:動作確認
ドアを閉めてから再度開き、設定した位置でしっかり止まるかを確認します。
ストップ機能が効かない場合の対処法
ストップ機能が効かなくなった場合は、以下の手順で対処しましょう。
セレーションの噛み合わせ確認
- ドアを少し開いた状態にします
- ジョイント部分(セレーションがある部分)を手で軽く揺らします
- カチッと音がして噛み合えば、その後ストップ機能を調整します
ストップ機能の再設定
- ドアをストップさせたい角度まで開きます
- リンク(ストップ調整部分から出ている長い棒)を下から押し上げます
- ストップ調整用ネジを締めます(レバータイプの場合はレバーを倒す)
それでも効果がない場合は、部品の摩耗や故障が考えられます。その場合は、専門業者に相談するか、ドアクローザーの交換を検討しましょう。
ドアクローザー調整時の注意点
ドアクローザーは精密な油圧機構で動作しているため、調整時には細心の注意が必要です。不適切な調整は故障の原因となり、最悪の場合は交換が必要になることもあります。ここでは、調整の際の注意点を解説します。
調整弁を回しすぎない
ドアクローザー調整で最も注意すべき点は調整弁を回しすぎないことです。緩めすぎると油漏れの原因になり、調整弁が本体表面から飛び出すと元に戻せません。一度に1/4回転以上回さず、少しずつ調整してください。
少しずつ調整する
ドアクローザーの調整は少しずつ行うのがコツです。3〜5度の小さな角度で回し、毎回ドアの動きを確認し、1つの調整後は必ず数回開閉テストをしましょう。完全に閉まる理想的な時間は5〜8秒程度で、風の強い日は調整を避けるべきです。
調整できないケース
油漏れがある場合、製品寿命(10〜20年)を超えた場合、調整弁が1個しかない古いタイプの場合は、調整ではなく交換を検討してください。これらのケースでは調整効果が期待できません。
ドアクローザーのトラブルシューティング

ドアクローザーは長年の使用や経年劣化によって、さまざまなトラブルが発生することがあります。ここでは、よく見られる問題とその対処法について解説します。
バタンと閉まる問題の解決法
ドアが「バタン」と大きな音を立てて閉まる場合は、以下の点をチェックして対処しましょう。
1. 油漏れの確認
- 本体から油が漏れていないか目視で確認します
- 油漏れがある場合は交換が必要です
2. 速度調整
- 特に調整弁2(第二速度)と調整弁3/L(ラッチング速度)を時計回りに回して遅くします
- 少しずつ調整し、適切な速度になるまで繰り返します
3. 取り付け位置の確認
取り付け方が不適切な場合も「バタン」と閉まることがあります。以下をチェックしてください。
正しい取り付け | 間違った取り付け |
リンクがドアと平行 | アームがドアと平行で、リンクが斜め |
スムーズに閉まる | スピード調整しても「バタン」と閉まる |
ドアが閉まりきらない問題の解決法
ドアが最後まで閉まらず隙間が残ってしまう場合、いくつかの対処法を試すことができます。
まずはラッチング速度の調整から始めましょう。調整弁3(L)を反時計回りにやや回すことで速度を上げ、ドアが最後の数センチで勢いよく閉まるようにします。
それでも改善しない場合は、ドアの開閉全体をチェックしてみてください。ドア自体が歪んでいないか、枠との間で擦れる場所がないか、丁番(ちょうばん)の状態は正常かを確認します。
さらに、可動部の潤滑も効果的です。リンクやアームなどの可動部や丁番部分に潤滑剤を少量塗布すると、動きがスムーズになることがあります。ただし重要な注意点として、内部の油圧システムには絶対に潤滑剤を使用しないでください。油圧システムに異物が混入すると、正常な動作を妨げる可能性があります。
油漏れの確認方法と対処
油漏れは本体上下の主軸、調整弁周辺、床面の油滴を確認し、見つかった場合は交換が必要です。油が漏れ続けると最終的に完全に機能しなくなります。
不適切な取り付けによる問題と修正法
ドアクローザーが正しく取り付けられていないと、どれだけ調整しても適切に機能しません。不適切な取り付けの症状として、ドアが閉まる直前に急激に閉まる、アームとリンクの角度が不自然、動きがスムーズでないなどがあります。
修正するには、リンク・アーム連結を外し、リンクがドア平行になるようアームの長さを調整して再連結します。正しく取り付けられたドアクローザーは、閉まる際の動きがスムーズで、速度調整も効果的に働きます。
ドアクローザー交換が必要なケース
どれだけ調整を試みても改善しない場合は、ドアクローザーの交換を検討する時期かもしれません。以下のような状態は、交換が必要なサインです。
油漏れが確認された場合
ドアクローザー本体から油が漏れている場合は、内部のシールが劣化している可能性が高く、修理ではなく交換が必要です。油漏れは放置すると床を汚したり、ドアの閉まる速度を制御できなくなったりします。
調整しても問題が解決しない場合
複数回にわたって調整を試みても問題が解決せず、ドアが急に閉まったり、閉まりきらなかったりする場合は、内部機構の劣化が進んでいる可能性があります。
製品寿命(一般的に10~20年)を迎えた場合
ドアクローザーの一般的な耐用年数は10~20年と言われています。築年数の古い住宅では、見た目は問題なくても内部機構が劣化していることがあります。設置後15年以上経過している場合は、予防的な交換も検討しましょう。
速度調整弁が1個しかない古い機種の場合
古いタイプのドアクローザーは、速度調整弁が1個しかない場合があります。これらは調整の精度が低く、現在の生活スタイルに合わないことが多いです。現行の機種に交換することで、より細かい調整が可能になります。
まとめ
この記事では、ドアクローザーの調整方法について詳しく解説しました。適切に調整することで、ドアがバタンと閉まる問題や閉まりきらない問題など、多くのトラブルを自分で解決することができます。
ドアクローザーが適切に調整されれば、ドアの開閉がスムーズになり、日常生活の小さなストレスを解消することができます。ぜひ、この記事を参考に調整にチャレンジしてみてください。