ドアの無いところにドアを付ける DIY

ドアのないところに引き戸をDIYできる?取り付け手順と費用を解説

2025.11.14
SPECIAL FEATUREコラム

目次

「子供部屋を作るために部屋を分けたい」「リビングの冷暖房が効きにくい」「来客時に見せたくない場所がある」など、ドアのない場所に仕切りが欲しくなる瞬間はありませんか?

業者に頼むと費用がかさむイメージがありますが、DIYでも後付けでドアを設置することが可能です。

ただし、DIYでドアを設置する難易度は高いです。

この記事では、数あるドアの種類の中でも特にDIY初心者におすすめな「引き戸」に焦点を当て、その取り付け手順や必要なもの、費用と現実的な設置の難易度について詳しく解説します。ご自身で対応できそうか、参考にしてみてください。

みんながDIYでドアを後付けしたくなった理由は?

多くの方が、住まいの快適性を向上させるためにドアの後付けを検討します。まずは、どのような目的でドアの設置が考えられるのか、具体的な理由を見ていきましょう。

部屋を仕切ってプライバシーを確保するため

最も多い理由の一つが、プライバシーの確保です。広いワンルームを寝室とリビングに分けたり、リビングの一角に在宅ワーク用のスペースを作ったりと、ドアで仕切れば家族がいてもそれぞれのプライベートな空間を保てます。

子供の成長に合わせて子供部屋を用意したい場合にも、ドアの設置は有効な手段です。

冷暖房の効率をアップして節約するため

ドアがない広い空間は、冷暖房の空気が全体に行き渡るまで時間がかかり、電気代が高くなる傾向にあります。特に、リビング階段などは暖かい空気が上の階へ逃げやすく、冬場は寒さを感じやすいです。

ドアや間仕切りを設置することで空間が区切られ、空調の効率が格段に上がり、結果として光熱費の節約につながります。

生活空間をおしゃれに間仕切るため

ドアは単なる仕切りとしてだけでなく、インテリアのアクセントとしての役割も果たします。

木製のドアで温かみを加えたり、ガラス入りのデザインで開放感を演出したりと、選ぶドアによって部屋の印象は大きく変わります。

空間を機能的に分けつつ、おしゃれな雰囲気を作り出せるのもドア後付けの魅力です。

DIY初心者には「引き戸」がおすすめ

DIYで後付けできるドアにはいくつかの種類がありますが、それぞれに特徴と取り付けの難易度があります。ここでは、なぜDIY初心者には引き戸がおすすめなのかを解説します。

【関連記事】開戸の種類を徹底解説!特徴や選び方を知って後悔しないドア選び » 中尾製作所オンラインショップ

ドアの種類メリットデメリットDIY難易度
引き戸省スペース 開放感を保てる バリアフリー向き気密性・遮音性が低い 壁面に戸を引き込むスペースが必要★★☆☆☆
アコーディオンドア取り付けが簡単 費用が安い気密性・遮音性が低い やや安価な印象に見えることも★☆☆☆☆
開き戸気密性・遮音性が高い デザインが豊富開閉スペースが必要 取り付けの精度が求められる★★★★☆
折れ戸開口部を広く取れる 省スペース構造が複雑 取り付けが難しい★★★★★

引き戸は省スペースで開閉できる

引き戸は、壁に沿って左右にスライドして開閉するタイプのドアです。ドアが前後に動くスペースを必要としないため、部屋を広く使えるのが最大のメリットです。

家具の配置に制約が生まれにくく、狭い場所でも圧迫感を与えません。また、シンプルな構造のものが多く、DIYでの設置が比較的容易な点も初心者におすすめの理由です。

手軽さが魅力のアコーディオンドア

アコーディオンドア(またはパネルドア)も、比較的簡単に設置できる間仕切りです。レールを取り付けて本体を吊るすだけで設置できる製品が多く、DIY初心者でも挑戦しやすいでしょう。ただし、引き戸に比べると気密性や遮音性は劣る傾向にあります。

開き戸や折れ戸のDIYは上級者向け

一般的なドアである開き戸や、クローゼットなどによく使われる折れ戸は、ドアを吊るすための枠の設置や、蝶番(ちょうつがい)の精密な取り付けが必要になります。

少しのズレが開閉のスムーズさに大きく影響するため、DIYの難易度は格段に上がります。

そのため、これらは「こんな方法もある」程度に留め、まずは引き戸から検討するのが賢明です。

DIYで後付けできる引き戸の主な種類

引き戸と一言でいっても、レールや設置方法によっていくつかの種類に分かれます。ここでは、DIYで後付けする場合に選ばれることが多い代表的な3つのタイプを紹介します。

壁の外側に取り付ける「アウトセット引き戸」

アウトセット引き戸は、既存の壁の外側にレールを取り付け、そこからドアを吊るすタイプです。壁を壊すなどの大掛かりな工事が不要なため、後付けに最も適した方法と言えます。

レールのデザインも豊富で、あえて見せることでおしゃれなインテリアの一部にすることも可能です。

天井から吊るす「上吊り式引き戸」

上吊り式は、天井や壁の上部に取り付けたレールからドアを吊るす方式です。床にレールがないため、足元がすっきりして掃除がしやすく、バリアフリーの観点からも優れています。

取り付ける際は、天井や壁にドアの重さを支えられるだけの強度(下地)があるかどうかの確認が不可欠です。

上吊引戸戸車 » 中尾製作所オンラインショップ

床にレールを設置する「Vレール引き戸」

Vレール引き戸は、床にV字型の溝があるレールを設置し、その上を戸車が付いたドアが移動する方式です。

ドアの重量が床にかかるため、上吊り式に比べて壁や天井の強度を気にする必要が少ないのが特徴です。ただし、床にレールを設置するため、わずかな段差ができます。

引き戸DIYの前に確認すべき4つのポイント

DIYを成功させるためには、事前の準備と確認が何よりも重要です。作業を始めてから「こんなはずじゃなかった」とならないよう、以下のポイントを必ずチェックしましょう。

そして、ドアを取り付けるDIYはそもそも難易度が高いため、この時点で自身にはハードルが高いと感じた際は無理せず専門業者に頼ることをおすすめします。

【関連記事】引き戸リフォームの費用はいくら?開き戸からの交換や後付けの方法と注意点を解説します » 中尾製作所オンラインショップ

ポイント1:取り付け場所の寸法を正確に測る

ドアを設置したい開口部の「高さ」「幅」「壁の厚み」を、メジャーを使ってミリ単位で正確に測定します。測定する際は、最低でも上・中・下の3ヶ所を測り、最も小さい数値に合わせてドアのサイズを決めると失敗が少なくなります。採寸ミスはドアが収まらない、隙間が大きすぎるといった致命的な問題に直結するため、慎重に行いましょう。

ポイント2:壁や天井の下地の有無を確認する

特に上吊り式の引き戸を取り付ける場合、レールの固定は非常に重要です。

石膏ボードの壁や天井に直接ネジを打っても強度が足りず、ドアごと落下してくる危険があります。

壁の内部にある「下地」と呼ばれる柱や間柱にしっかりとネジを固定する必要があるため、「下地探しセンサー」などの道具を使って、下地の位置を正確に確認してください。

ポイント3:ドア本体のデザインや素材を選ぶ

ドア本体は、部屋の雰囲気を大きく左右する要素です。

シンプルな無地のものから、木目調、ガラスが入ったデザインまで様々です。どのような部屋にしたいかをイメージしながら、既存のインテリアと調和するものを選びましょう。

また、ドアが重すぎると開閉が大変になったり、壁への負担が大きくなったりするため、素材と重さのバランスも考慮することが大切です。

ポイント4:賃貸の場合は原状回復可能か確認する

賃貸住宅でDIYを行う場合は、退去時の「原状回復」が可能かどうかが大きなポイントになります。壁や床に穴を開けずに設置できる突っ張り式の製品を選ぶなど、建物を傷つけない方法を検討する必要があります。DIYを始める前に、必ず管理会社や大家さんに施工の可否を確認しましょう。

参考:住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について – 国土交通省

引き戸をDIYで取り付ける全5ステップ

準備が整ったら、いよいよ取り付け作業です。ここでは、DIYで人気の「アウトセットタイプの上吊り式引き戸」を例に、基本的な取り付け手順を5つのステップで解説します。

ドアを取り付けるDIYはそもそも難易度が高いため、自身にはハードルが高いと感じた際は無理せず専門業者に頼ることをおすすめします。

ステップ1:必要な道具と材料を準備する

まず、作業に必要な道具と材料を揃えましょう。ホームセンターや通販サイトで手に入ります。

項目具体例備考
材料ドア本体 引き戸用レールセット (レール、戸車、振れ止めなど)ドアのサイズに合ったものを選ぶ
電動工具電動ドライバー (インパクトドライバー)ネジ締めを効率的に行うために必須
計測・印付け道具メジャー さしがね 水平器 鉛筆正確な取り付けに欠かせない
下地探し道具下地探しセンサー壁裏の下地の位置を探す
その他キリ 脚立 作業用手袋安全かつスムーズに作業するために準備する

ステップ2:レールと戸車を取り付ける

最初に、ドアを吊るすためのレールを取り付けます。下地探しセンサーで壁の上部にある下地の位置を確認し、鉛筆で印を付けます。

次に、水平器を使ってレールが地面と水平になるように位置を決め、電動ドライバーでネジを打ち込んで固定します。

この時、レールを壁に取り付ける前に、必ずレールの中に戸車(とぐるま)を先に入れておいてください。戸車とは、ドア本体に取り付けてレールの中を転がる滑車のことです。

多くの製品では、レールを固定した後から戸車を入れることはできません。

なお、レールが少しでも傾いているとドアが勝手に開閉してしまう原因になるため、慎重に作業してください。

引戸»中尾製作所オンラインショップ

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ステップ3:ドア本体に吊り下げ用の金具を取り付ける

次に、ドア本体の上部に戸車へドアを吊り下げる金具を取り付けます。製品の説明書に従い、指定された位置にネジでしっかりと固定します。

金具の取り付け位置がずれるとドアが傾いてしまうため、さしがねなどを使って正確な位置を割り出しましょう。

ステップ4:ドア本体をレールに取り付ける

金具を取り付けたドア本体を持ち上げ、戸車をレールに引っ掛けるようにして吊るします。

ドアは意外と重いので、二人以上で作業しましょう。吊るし終わったら、スムーズに左右に動くかどうかを数回開閉して確認します。

ステップ5:振れ止めや戸当たりを設置する

最後に、ドアの下部が前後に揺れるのを防ぐ「振れ止め」を床に取り付けます。

また、ドアが開閉時に壁に直接ぶつからないように、レールの端に「戸当たり(ストッパー)」を設置します。部品を取り付け、最終的な開閉のスムーズさや、閉めたときの収まり具合を確認したら完成です。

ドアの取り付けが難しいと感じたら

引き戸を取り付けるDIYの手順を見て、思ったよりも作業が複雑で難しいと感じた方もいるかもしれません。

ドアのないところにドアを新設するDIYは、木材の加工や壁の構造を扱うため、実は非常に難易度が高い作業です。もし少しでも作業に不安を感じたり、きれいに仕上げる自信がなかったりする場合は、無理せずプロの業者へ依頼することを強くおすすめします。

安易にDIYを進めてしまった場合に起こりうるリスクを次の表にまとめました。

作業中の怪我壁の解体や木材の切断など、慣れない工具の扱いや重量のある部材の取り扱いには危険が伴う。 予期せぬ部材の落下や、隠れた釘などで手を切るなどの怪我につながる可能性も否定できない。
建物の構造を傷つけてしまう壁の内部には、建物を支える重要な柱や電気配線などが通っている場合がある。 知識なく壁を解体すると、これらを損傷させ、大規模な修繕が必要になる恐れがある。
ドアが正常に機能しない正確な採寸や水平・垂直の取り付けができていないと、ドアがスムーズに開閉しなかったり、傾いてしまったりする。 隙間ができてしまい、冷暖房の効率が著しく低下することもある。
結果的に費用と時間がかさむDIYで失敗してしまい、結局業者に修正を依頼することになると、最初から依頼するよりも高額な費用と時間がかかってしまうことがある。
仕上がり満足度が低くなる壁紙の処理や枠の取り付けがうまくいかず、見た目が悪くなってしまうケースも少なくない。 せっかく設置しても、満足のいく仕上がりにならない可能性がある。

ご自身の安全と、建物を守り美しい仕上がりを確実なものにするためにも、まずは専門業者に相談し、見積もりを取ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

引き戸DIYにかかる費用の目安

DIYの大きな魅力は、業者に依頼するよりも費用を抑えられる点です。引き戸のDIYにどれくらいの費用がかかるのか、目安を見てみましょう。

ただし、失敗してしまった場合は修正や追加施工に費用がかかり、結果的に出費がかさんでしまう可能性があることも鑑みましょう。

ドア本体の価格相場

ドア本体の価格は、デザインや素材によって大きく異なります。シンプルなフラットタイプのドアであれば1万円台からありますが、ガラスが入ったデザイン性の高いものや、無垢材を使用したものは数万円以上になることもあります。

レールや金物類の価格相場

引き戸用のレールや戸車、ハンドルなどがセットになった金物キットは、5,000円〜20,000円程度が相場です。デザイン性の高いアイアン製などはおしゃれですが、価格も高くなる傾向にあります。

最低限揃えたい道具の費用

電動ドライバーや下地探しセンサーなどの道具を持っていない場合は、初期投資としてこれらを揃える費用がかかります。

道具価格目安
電動ドライバーセット5,000円~15,000円
下地探しセンサー2,000円~4,000円
水平器1,000円~3,000円
合計8,000円~22,000円

すべてを新品で揃えるのではなく、レンタルサービスを利用したり、知人から借りたりすることで初期費用を抑えることも可能です。全体として、シンプルな引き戸であれば、総額で2万円〜5万円程度からDIYが可能と言えるでしょう。

DIYで失敗しないための3つの注意点

最後に、DIY初心者が陥りがちな失敗を防ぐための重要な注意点を3つ紹介します。これらを守ることで、仕上がりのクオリティが大きく向上します。

採寸ミスは致命的な失敗につながる

繰り返しになりますが、採寸はDIYの成否を分ける最も重要な工程です。「これくらいでいいだろう」という安易な判断はせず、必ず複数箇所を正確に測ってください。

メジャーがたるんでいたり、斜めになっていたりするだけでも数ミリの誤差が生まれます。

この小さな誤差が、後々の大きな問題につながることを肝に銘じておきましょう。

下地がない場所への取り付けは非常に危険

特に上吊り式の引き戸の場合、下地のない石膏ボードにレールを取り付けるのは絶対にやめてください。ドアの重さに耐えきれず、壁ごとレールが剥がれ落ちる重大な事故につながる可能性があります。

下地探しセンサーを使っても見つけられない場合は、壁の構造に詳しい専門家に相談することも検討してください。

水平と垂直を常に意識して作業する

レールを取り付ける際の「水平」と、ドアを吊るした際の「垂直」が保たれていないと、見た目が悪いだけでなく、ドアがスムーズに開閉しなかったり、勝手に動いてしまったりする原因となります。

面倒でも、作業の都度、水平器を使って確認する癖をつけましょう。急がば回れの精神が、美しい仕上がりへの近道です。

まとめ

ドアのない場所に引き戸をDIYで取り付けることは決して不可能なことではありませんが、豊富な技術力や経験を必要とします。

もしDIYするのであれば、正しい手順を踏み、注意点を守って安全に作業を進めましょう。自信がない方やDIYを初めて行う方の場合、専門業者に設置を依頼することも選択肢に入れましょう。

 専門業者であれば、設置できるかどうかの判断や正しく動作するかの確認など、トラブルを未然に防ぐ作業をしてくれるため、設置後の使用に関しても安心できます。

本記事を参考にして、トラブルなくドアのないところにドアをつけてみてください。

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