引戸 玄関 断熱

引戸玄関の断熱対策完全ガイド!快適な住まいを実現する方法とは

2025.6.11
SPECIAL FEATUREコラム

玄関の引戸から冷気が入り込み、家全体が寒く感じていませんか?または夏の暑い日差しが玄関から室内に伝わり、冷房効率が悪くなっていませんか?

実は玄関引戸は、住宅の中でも熱の出入りが大きい場所の一つです。適切な断熱対策をすることで、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住環境を実現できます。

この記事では、引戸玄関の断熱性能を高める方法から、断熱引戸の選び方、リフォーム費用の相場まで、徹底的に解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、あなたの住まいに最適な断熱対策を見つけてください。

玄関引戸の断熱性能が住環境に与える影響

住宅の断熱性能を考える上で、多くの方が窓やサッシに注目しがちですが、実は玄関引戸の断熱性能も住環境全体に大きな影響を与えています。

経済産業省資源エネルギー庁によれば、「住宅の断熱で重要なのが、開口部の断熱性能を高めることです。冬の暖房時に室内から逃げ出す熱の約6割が窓などの開口部からで、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割は窓などの開口部からです」とされています。

(引用: )

玄関引戸は住宅の開口部の中でも面積が大きいため、断熱性能が低いと次のような問題が生じます:

発生する問題

  • 冬場は玄関からの冷気が家全体に広がり、暖房効率が下がる
  • 夏場は外気の熱が室内に伝わり、冷房効率が悪化する
  • 結露が発生しやすくなり、カビやダニの発生原因となる
  • 光熱費の上昇につながる

特に玄関引戸からの冷気は、室内ドアの下部の隙間を通ってリビングや洗面所にも侵入していきます。暖房をしているのに足元が冷えるという現象は、窓からのコールドドラフトだけでなく、玄関からの冷気も大きく影響しているのです。

断熱対策を施した玄関引戸に交換するだけで、家全体の温熱環境が改善し、冷暖房費を10~15%程度削減できるケースもあります。

引戸と開き戸、断熱性能の違いを比較

玄関ドアを選ぶ際、「開き戸」と「引戸」のどちらが断熱性に優れているのか気になる方も多いでしょう。それぞれの断熱性能の違いを詳しく見ていきましょう。

住宅用ドアの種類を詳しく知りたい方はこちらをチェックしてみてください。

【内部リンク】

なぜ従来の引戸は断熱性能が低かったのか

従来の玄関引戸は、開き戸に比べて断熱性能が低いと言われてきました。その主な理由は以下の3点です。

主な理由

  1. 構造上の問題: 引戸は開閉のためのレールや溝が必要で、その部分から冷気や熱が出入りしやすい構造になっています。
  2. ガラス面積の広さ: 引戸はデザイン上、ガラス面積が広くなる傾向があります。ガラス部分の断熱性能が低いため、単板ガラスを使用した引戸では熱の出入りが大きくなります。
  3. 気密性の低さ: 引戸は戸と枠の間に隙間ができやすく、完全な気密を保つことが難しい構造です。特に経年劣化によって隙間が広がると、さらに断熱性能が低下します。

これらの要因から、従来の引戸のU値(熱貫流率)は3.0~6.5程度と高く、断熱性能が低い傾向にありました。

U値が高いほど熱が伝わりやすく、断熱性能が低いことを示します。

最新の断熱引戸はどこまで性能が向上したのか

近年、住宅の断熱性能に対する意識の高まりから、引戸の断熱性能も飛躍的に向上しています。最新の断熱玄関引戸には、次のような技術が採用されています。

最新引戸に採用されている技術

  1. 複層ガラスの採用: 従来の単板ガラスではなく、空気層を挟んだ複層ガラスやLow-E複層ガラスを採用することで、ガラス部分の断熱性能が大幅に向上しています。
  2. 枠構造の改良: 熱を伝えにくい素材や断熱材を枠に使用し、熱橋(ヒートブリッジ)を減少させる工夫がされています。
  3. 気密性の向上: 戸と枠の接触部分に高性能なガスケットやシール材を使用し、気密性を高めています。
  4. 断熱材の内蔵: 引戸のパネル部分に高性能な断熱材を内蔵することで、面からの熱移動を抑制しています。

これらの技術改良により、最新の断熱玄関引戸のU値は1.8~2.0程度まで低下しました。

もちろん、開き戸の最高級モデル(U値:0.7~1.0程度)には及びませんが、使い勝手の良さを保ちながら断熱性能も確保できる水準まで進化しています。

引戸と開き戸の断熱性能比較表(U値:熱貫流率、低いほど断熱性能が高い)

ドアのタイプ一般的なU値高断熱タイプのU値特徴
従来の引戸3.0~6.5ガラス面積が広く断熱性に劣る
最新の断熱引戸1.8~2.0複層ガラス採用で断熱性向上
一般的な開き戸2.0~3.0構造上、引戸より断熱性が高い
高断熱開き戸0.7~1.0最も断熱性に優れる

引戸は開閉のしやすさやバリアフリー性、省スペース性など多くのメリットがあります。最新の断熱引戸であれば、そうした利点を活かしながら、断熱性能も確保できるのです。

玄関引戸の断熱対策3つの方法

玄関引戸の断熱性を高めるためには、大きく分けて3つの方法があります。予算や住宅の状況に合わせて、最適な方法を選びましょう。

既存の引戸を断熱強化する方法

すぐに引戸を交換する予算がない場合や、賃貸住宅にお住まいの場合は、次のような対策で既存の引戸の断熱性を高めることができます。

賃貸住宅での対策

  1. 断熱シートの貼付
    両面テープ付きの断熱シートを引戸のガラス部分に貼り付けることで、ガラスからの熱の出入りを抑制できます。透明タイプやすりガラス風のものなど、デザインに合わせて選べます。ただし、見た目がやや安っぽくなる点と、引戸の開閉に支障が出る可能性がある点には注意が必要です。
  2. 隙間テープの活用
    引戸と枠の間の隙間風を防ぐために、隙間テープを貼り付けるのも効果的です。特に戸と枠の接触部分や床との隙間に貼ることで、気密性が向上します。V型やP型など、隙間の大きさに合わせてテープを選びましょう。
  3. 断熱カーテンの設置
    玄関引戸の内側に厚手の断熱カーテンを取り付けることで、冷気の侵入を防げます。カーテンレールとカーテンを設置するだけなので、DIYでも比較的簡単に実施できます。冬だけ使用し、夏は取り外すという使い方もできます。
  4. 断熱ボードの設置
    冬季限定の対策として、断熱ボード(スタイロフォームなど)を引戸の内側に設置する方法もあります。特に夜間や不在時に設置することで、熱損失を抑えられます。ただし美観を損なう点と、日中の出入りには不便な点にご注意ください。

これらの対策は一時的な効果が期待できますが、恒久的な解決策とはなりません。

予算が許せば、次に紹介する断熱性能の高い引戸への交換を検討することをおすすめします。

断熱性能の高い引戸に交換する方法

断熱性能の高い玄関引戸に交換することで、次のようなメリットが得られます。

メリット

  1. 快適な室内環境の実現
    断熱性能の高い引戸に交換することで、玄関からの冷気や熱気の侵入を抑制し、家全体の温度ムラを軽減できます。特に玄関に近いリビングや廊下の快適性が向上します。
  2. 光熱費の削減
    断熱性能が向上すると、暖房や冷房の効率が上がり、エネルギー消費量が減少します。結果として、年間の光熱費削減につながります。一般的に、断熱性能の低い引戸から高断熱引戸に交換することで、年間1~2万円程度の光熱費削減効果が期待できます。
  3. 結露の防止
    高断熱引戸は表面温度の低下が抑えられるため、結露が発生しにくくなります。結露の防止は、カビやダニの発生を抑え、健康的な住環境の実現に役立ちます。
  4. 建て付けの改善
    古い引戸を新しく交換することで、経年劣化による建て付けの悪さも解消されます。開閉がスムーズになり、鍵のかかりも良くなるなど、使い勝手も向上します。
  5. 防犯性能の向上
    最新の断熱玄関引戸は、断熱性能だけでなく防犯性能も向上しています。こじ開け防止機能や防犯ガラスの採用など、安全面でもメリットがあります。

断熱性能の高い引戸に交換する際は、単に断熱性だけでなく、デザイン性や使い勝手、メンテナンス性なども総合的に検討することが重要です。

玄関周りの断熱対策で効果を高める方法

玄関引戸の断熱対策の効果をさらに高めるためには、玄関周りの断熱対策も併せて行うことが重要です。以下にいくつかの有効な方法を紹介します。

玄関周りの断熱対策

  1. 玄関土間の断熱対策
    玄関の床(土間)はコンクリートやタイルなど熱を伝えやすい素材が使われており、冷気を室内に伝える原因となります。対策としては以下の方法があります。
    • ドアマットや断熱マットを敷く(簡易的な方法)
    • 床下に断熱材を施工する(業者依頼の場合)
    • 床面にスタイロフォームを敷き、その上にベニヤ板とクッションフロアを敷く(DIYの場合)
  2. 玄関周りの壁の断熱強化
    玄関周りの壁の断熱性を高めることで、玄関全体の断熱効果が向上します。既存の壁に断熱ボードを貼り付けたり、壁の中に断熱材を充填したりする方法があります。
  3. 玄関ホールとの仕切りの設置
    玄関と室内の間に断熱性の高い室内ドアや引戸を設置することで、冷気の侵入を二重に防ぐことができます。予算や空間に余裕がある場合は、風除室を設けるのも効果的です。
  4. 天井の断熱強化
    玄関の天井部分も断熱対策を施すことで、冬の暖気の流出や夏の熱気の侵入を防げます。特に玄関上部が小屋裏になっている場合は、天井裏に断熱材を敷き詰めることが効果的です。

これらの対策を組み合わせることで、玄関引戸の断熱対策の効果が相乗的に高まります。

特に、新しい断熱引戸に交換する際は、同時に玄関周りの断熱対策も検討することをおすすめします。

断熱性能の高い玄関引戸の選び方

断熱性能の高い玄関引戸を選ぶ際は、いくつかのポイントをおさえることが重要です。

ここでは、断熱性能の指標となるU値の意味から、メーカー別の性能比較、選び方のポイントまで解説します。

断熱性能を示すU値とは何か

断熱性能を示す指標として最も一般的なのが「U値(熱貫流率)」です。

この数値を理解することで、引戸の断熱性能を客観的に評価できます。

U値とは、建材の両側の温度差が1度あるとき、1㎡あたり1時間に流れる熱量(W/㎡・K)を示す値です。つまり、U値が小さいほど熱が伝わりにくく、断熱性能が高いことを意味します。

一般的な玄関引戸のU値の目安は以下の通りです:

  • 断熱性能が低い引戸:U値 3.0~6.5
  • 標準的な断熱引戸:U値 2.0~3.0
  • 高断熱引戸:U値 1.8~2.0
  • 最高断熱レベル(主に開き戸):U値 0.7~1.0

住宅の断熱性能を総合的に表す「UA値」(外皮平均熱貫流率)の計算でも、玄関ドアのU値は重要な要素になります。

特に省エネ基準やZEH基準を目指す場合は、引戸のU値にも注目する必要があります。

断熱引戸選びで失敗しないためのポイント

断熱性能の高い玄関引戸を選ぶ際のポイントをいくつかご紹介します。これらのポイントを押さえることで、長く使える満足度の高い選択ができるでしょう。

ポイント

  1. 引戸の形状を考慮する
    引戸にはさまざまな形状がありますが、基本的には片引き・一本引きタイプの方が、引き違いタイプよりも断熱性能が高くなります。これは、戸と枠の接触面積が関係しています。また、レールの構造も気密性に影響するため、確認しておきましょう。
  2. ガラスの種類を選ぶ
    引戸の断熱性能に大きく影響するのがガラスの種類です。
    • 単板ガラス:最も断熱性が低い
    • 複層ガラス:2枚のガラスの間に空気層があり、単板より断熱性が高い
    • Low-E複層ガラス:特殊金属膜でさらに断熱性を高めたもの
    • Low-E複層ガラス(遮熱タイプ):夏の日差しも効果的にカット

南向きや西向きの玄関では、夏の暑さ対策として遮熱タイプのガラスを選ぶと効果的です。

ポイント

  1. 断熱材の有無・種類を確認する
    引戸の枠やパネル部分に使われている断熱材の有無や種類も重要です。高性能な断熱材を使用しているモデルほど、断熱性能が高くなります。カタログやショールームでしっかり確認しましょう。
  2. 気密性能に注目する
    断熱性能だけでなく、気密性能も重要なポイントです。戸と枠の接触部分にはどのようなシール材が使われているか、経年劣化しにくい構造になっているかなどを確認しましょう。
  3. メンテナンス性を考慮する
    断熱引戸も長期間使用するとパッキンなどのシール材が劣化し、断熱性能が低下する可能性があります。定期的なメンテナンスの容易さや、部品交換のしやすさも選択基準に入れるとよいでしょう。
  4. U値だけでなく総合的に判断する
    U値が低くても、使い勝手が悪ければ満足度は下がります。デザイン性、操作性、耐久性、防犯性なども含めて総合的に判断しましょう。特に日常的に使用する玄関引戸は、開閉のしやすさも重要な選択基準です。
  5. 住宅全体の断熱バランスを考える
    玄関引戸だけ高断熱にしても、周囲の壁や窓の断熱性能が低ければ効果は限定的です。住宅全体の断熱性能のバランスを考慮し、費用対効果の高い選択をしましょう。

断熱引戸と一緒に検討したい玄関の断熱対策

玄関の断熱性能を高めるには、引戸自体の性能向上だけでなく、玄関周辺の断熱対策も併せて行うことが効果的です。

ここでは、断熱引戸と組み合わせると効果の高い玄関の断熱対策について、具体的な方法をご紹介します。

玄関土間の断熱対策

玄関の土間部分は床下断熱や外壁断熱とは異なる構造となっているため、冷気が侵入しやすい場所です。玄関引戸とともに土間の断熱対策を行うことで、効果を高められます。

最も手軽な方法としては、厚手のドアマットや断熱ラグを敷くことがあげられます。保温性と吸水性を兼ね備えたタイプを選ぶと実用性が高まり、特に冬季は床からの冷えを和らげる効果があります。

より本格的な対策としては床下断熱があります。

これはコンクリート土間の下に押出法ポリスチレンフォームなどの高性能断熱材を敷き込む方法で、新築時や大規模リフォーム時に適しています。

DIYでも可能な方法としては、既存の土間の上に断熱材を敷き、その上に仕上げ材を施工する床上断熱があります。

具体的には、スタイロフォームなどの断熱材(厚さ10mm~30mm)を土間に敷き、その上に合板を固定し、クッションフロアなどの仕上げ材で仕上げます。

ただしこの方法は床高が上がるため、玄関引戸との段差に注意が必要です。

もっとも効果的な対策としては蓄熱式床暖房の設置があります。

玄関土間に電気式床暖房を設置すれば、深夜電力を利用しコスト効率よく暖かさを保てます。

初期費用は高めですが、冬の寒さ対策としては最も効果的な方法と言えるでしょう。

夏の暑さ対策にも効果的な遮熱対策

断熱引戸への交換は冬の寒さ対策だけでなく、夏の暑さ対策としても効果があります。特に複数の対策を組み合わせることで、より快適な夏の玄関環境を作り出すことができます。

まず検討したいのは遮熱性の高いガラスの採用です。

Low-E複層ガラスのなかでも「遮熱タイプ」を選ぶことで、日射による熱の侵入を効果的に抑制できます。特に西日や南日が当たる玄関では、この遮熱効果の高いガラスが夏場の快適性を大きく向上させます。

外部からの日射熱を減らす方法として、玄関引戸の外側に庇やオーニングを設置するのも効果的です。直射日光を遮ることでガラス面の温度上昇を抑え、室内への熱の侵入を防ぎます。

特に南向きや西向きの玄関には非常に効果的で、自動巻き上げ式のオーニングを選べば、季節や時間帯に応じて柔軟に調整することもできます。

さらに、断熱引戸の多くに備わっている「通風機能」も上手に活用しましょう。

この機能を使えば、施錠したまま換気ができるため、夏の夜間に涼しい外気を取り入れて室内の熱気を排出できます。

朝夕の涼しい時間帯に換気を行うことで、自然の力を活かした温度調節が可能になります。

まとめ

玄関引戸の断熱対策は、住宅全体の快適性と省エネルギー性能を高める重要な要素です。

引戸のリフォームは、バリアフリー化や防犯性向上など、断熱以外のメリットも得られる点も魅力です。ライフスタイルや将来の住まい方も考慮しながら、最適な選択をしていただければと思います。

快適で省エネルギーな住環境づくりの第一歩として、ぜひ玄関引戸の断熱対策に取り組んでみてください。

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